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2002年10月11日 15:46 : サルにもわかるニュートリノ

 ノーベル賞、日本人ダブル受賞。
 化学賞は3年連続、3連覇。
 でもって、久々に物理学賞も。

 で、化学賞の田中さんはなんか良いキャラですね。
 大学院出ていない学士での受賞とか、研究がしたかったのであえて昇進試験を受けなかったとか。
 なんというか町の発明家がノーベル賞を!みたいな雰囲気で。

 ただ俺、化学はとんと苦手なんでよくわかんないんですが、噛み砕いて言うと「タンパク質を分析する画期的な方法」を開発したのが受賞理由とか。
 どうやら、タンパク質にレーザーを照射して蒸発させ、イオン化した分子を解析することでタンパク質の構造を解析するシステムのようです。

 ・・・・多分。

 一方、小柴名誉教授ですが。
 俺は科学は好きですが、化学・生物学分野はとんと無知の門外漢なもんで、むしろこっちの方が馴染み深いっす。
 それにしても、小柴教授ってノーベル賞もらってなかったのね。
 でも、ホーキング博士なんかももらってないので意外ではないのだけども。
 俺はてっきり、宇宙論方面ってのはぁ「メシの種になりゃしねぇ」ってことでノーベル賞はアレなのかと思ってたんですが。
 ただ「ビッグバン宇宙論」を提唱したガモフは受賞してないけど、その証拠である3K背景放射を発見したウィルソン、ベンジャスは受賞してるから「理論を立てた」人よりも、「それを実証した」人が受賞という傾向のようです。はい。

#過去の受賞者リストとか見ると、すごい顔ぶれだよね。
 SFヲにはお馴染みの単語である「チャンドラセカール」とか、「チェレンコフ」とか。


 で、小柴教授の受賞理由「ニュートリノの検出」ですが。
 俺のようなSFヲには馴染み深い「ニュートリノ」ですが、一般ピーポの方々には「何だそれ?ってものだと思われ。
 簡単に説明しときましょう。

 物質は原子からできてますが、原子はさらに「原子核」と「電子」でできてます。
 ここまでは中学校の理科で習う内容ですね。

 で、その「原子核」はさらに「陽子」と「中性子」でできてます。
 でもって電子ってのは原子核の周りをブンブンと回ってるのですが、陽子と中性子でできている原子核はガッチリとくっついて、並大抵のことじゃはがれません。

 でも、陽子と中性子ってどうやってくっついてんだろ?
 ちょっとやそっとじゃ剥がれないってことは、「接着剤」のようにくっつけてる「何か」があるはずです。
 その何かが「中間子」。
 1949年にノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士が発見しました。


 でも、その「滅多に剥がれない」陽子と中性子が剥がれてしまう事があります。
 例えば、もの凄い高速の素粒子が原子核に激突したり、あるいはもの凄い高温・高圧の中に原子核が放り込まれた場合です。
 例えば、核融合反応をしている恒星、そう太陽の中なんか。


 こうなってしまうと、陽子と中性子をガッチリと結びつけてた中間子は、原子核から弾き出されてしまいます。
 中間子は、陽子と中性子との間にいる時は接着剤として働くんですが、1人ぼっちで弾き出されるとあっという間にぶっ壊れてしまうんです。
 ぶっ壊れると、中間子は2つのカケラに砕けて飛び散ります。
 その1つが「μ(ミュー)粒子」。
 んでもってもう1つが、今回の受賞理由になった「ニュートリノ」ってわけです。


 つまり「ニュートリノ」は、「原子核がぶっ壊れた」証拠でもあり、「どれぐらいぶっ壊れてる」のかのバロメーターにもなるわけです。
 ところがこのニュートリノ、原子核の中にある陽子・中性子をつなぐ中間子がさらに砕けた破片なものですからものすごく小さい。
 しかも、難しい言葉で「透過性」というのですが、小さいせいでもう壁だろうがなんだろうが、物質をサクサクッとものすごい勢いで通り抜けしてしまうという性質を持ってます。

 どれぐらい通り抜けちゃうかと言いますと。
 仮に地球上で、地面に向けてニュートリノを発射すると、あっという間に地球の裏側の地面から突き抜けて、そのまま宇宙まですっとんでいってしまうぐらい凄いんです。

 そんな性質なものですから、つい最近になって「ニュートリノにも重さがある」ということがわかりましたが、何年か前までは「ニュートリノは重さがない」と言われ「んなバカな!?」という正体不明の素粒子だったんですね。


 この「質量がほとんど無い」「なんでも通り抜けちゃう」という性質のおかげで、存在はするのは間違いなさそうなんだけど、でも本当にそれを確かめる事がずっとできなかったんです。
 粒子を観測するというのは、ようするに網をはってそこに粒子がひっかかるのを調べるわけですが。その網の目まですりぬけちゃうんだもの。


 でも、そこはそれ。
 すっごーーーく、希なことなんですが。ぶつかっちゃうんですよ。
 ニュートリノが原子核に。

 で、ぶつかると何がおこるかというと衝突の衝撃で「光」がでます。
 この光が「チェレンコフ光」。
 ロシアのチェレンコフさんが見つけました(1958年ノーベル賞受賞)


 でも、ニュートリノ以外にも原子核に激突する粒子ってのは、バンバンあるわけで。(原子力発電所のまわりなんか、微量に飛び出す放射線がぶつかってバンバン光ってます)
 その「光」がニュートリノがぶつかったものなのか、区別のしようがないわけです。
 宇宙や、地上では。

 しかも「光」ったって、すごい小さくて、肉眼じゃ見ることなんかできないわけです。
 もしチェレンコフ光が肉眼で見えるぐらい強烈だったら、夜空は今頃、宇宙から降り注ぐ宇宙線が大気と衝突して発するチェレンコフ光で、真昼のように輝いているでしょう。

#実は、チェレンコフ光が肉眼で見える事もあるんですが。
 それは、普通じゃ考えられない異常な量の粒子が衝突を起こしている証拠で。
 そんな場所にいたら、あっという間にハゲて、血吐いて、白血病で死にます。


 そこで考えたわけです。

 「ニュートリノはバカみたいになんでもかんでも突き抜けちゃう」わけですから、逆に「ニュートリノぐらいしかやってこれないような所に網をはろう」と。
 例えば、地下数百mの場所とかに。
 ここまでくると、自然の中にある放射線も、宇宙線も、電波も電磁波も地面が邪魔してやってこられません。
 そんなとこまでやってこられるのは「地球の裏側まで突き抜けちゃう」ニュートリノぐらいのものです。

 そしてそこで「チェレンコフ光」が光れば、それはニュートリノがぶつかった以外に考えようがないので、ニュートリノが存在する証拠になるわけです。


 こうして岐阜県の神岡鉱山の地下深く、地下1000mの所に「網」が作られました。
 それが「スーパーカミオカンデ」なわけです。

 というか、元々「スーパーカミオカンデ」の前身である「カミオカンデ」は「他の素粒子の邪魔が入らない場所で『陽子崩壊』を観測する」ために作られたのね。
 「陽子崩壊」というのは、普通はどんなに力を加えようと壊れるハズがない「陽子」が、本当に奇跡のように希に、寿命がきて自然にぶっ壊れる現象のことなんですが。
 「陽子」の寿命というのが凄まじく。「10の30乗年(1000兆×1000兆年)」という気の遠くなるような、途方もないもので。

 「じゃあ陽子を10の30乗個集めれば、確率的に1年に1回は陽子崩壊が観測できるはずじゃん」

 というのが「カミオカンデ」が最初に作られた理由だったのです。


#最近の観測結果などから、どうも陽子の寿命は「2.5×10の30条(2500兆×1000兆)年」で思ってるよりもさらに長いようですが。


 ところが、これが・・・まるで見つからない。
 確率的には1年1回、陽子崩壊が見つかるはずだったわけですが、全然そんなもの見つからない。
 というわけで、せっかく作った「カミオカンデ」は無用の長物となりつつあったのです。
 ところがそんな時

 「でもさ、そういえばニュートリノならここまでやってくるよね」

 と小柴教授は考えたわけです。
 で、実際に「陽子崩壊」観測のための「網」であった「カミオカンデ」でニュートリノを探して見たところ、ついにニュートリノがぶつかって光ったとおぼしきチェレンコフ光を発見することに、世界で初めて成功しました。
 調べてみると、これはマゼラン大星雲で起こった超新星爆発の結果、宇宙からすっ飛んできたニュートリノであることがわかりました。
 これが1987年の事。


 さらにニュートリノの検出に成功した教授らは、今度は太陽からやってくる「太陽ニュートリノ」の検出に取り組みます。
 「太陽ニュートリノ」は、太陽の中で核融合反応が生じた結果生み出されるニュートリノで、さんさんとお日様の光と一緒に地上に降り注いでいるんですが。
 どうもこの数値が、それまでの太陽の観測結果から予想されるよりもずっと少ないようだということが言われてました。
 で、実際に調べてみたところ、予測値の1/4しか太陽ニュートリノは地上に降り注いでいませんでした。

 これはつまり、それまでの太陽の観測から得られていた「太陽の仕組み」以外の、「何か」が太陽には秘められていることを意味しています。
 こうしてニュートリノを調べることで、太陽などの恒星の内部構造が、それまでの理論だけでは説明しきれず、新しい理論が必要になったのです。

 「従来の理論でわかったつもりだったのが、実は違った」という事は、つまり「新しい理論」が必要ということです。
 こうして「新しい理論」を築くきっかけになったのが、カミオカンデ、スーパーカミオカンデで行われた一連のニュートリノ検出実験であり、ノーベル賞の受賞理由というわけ。


 そういうわけで、ある意味「スーパーカミオカンデ」(「カミオカンデ」をより高度・巨大にした観測施設)にこそノーベル賞は相応しい気もしますね。
 この「スーパーカミオカンデ」というのも、「プロジェクトX」のネタになりそうな(というか、なってないんだよね、調べてみたけど)実に凄い世界に誇る観測機器なんですわ。
 今年の頭に、その観測装置が大量に破損してしまってニュースになってたの覚えてますでしょうか?


 ってわけで「ニュートリノ」、ご理解いただけたでしょうか?


投稿者 : のむけん | カテゴリ : 宇宙 / 時事・News | Updated at : 2008.3.26 14:32
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