韓国映画 「オアシス」を観る。
暴行、強姦未遂、引き逃げで前科3犯のムショ帰りの社会不適応者の男と、重度の脳性麻痺の女の恋愛を描いたラブストーリ。
設定自体はあからさまに挑発的であるにもかかわらず、内容は極めてオーソドックスかつ普遍的で、感動的な物語に昇華されている。
最初に言っておくと、この映画は凄まじく衝撃的な、そして素晴らしい映画だ。
よくこんな映画が撮れたものだと思う。
アラを探せば探しようもあるが、細部のアラなどどうでもいいことだ。
映画全体を俯瞰して後から思い返したとき、自分でも「一体いつの間に?」と思うほど巧みに物語の中へと引き込まれていたことに気が付いた。
圧倒的な神が宿ったかの如き演技力と、現実には「ありえない」ようなシチュエーションに対して、全く不自然さやご都合主義を感じさせない構成力。
本当にこの映画は「傑作」だ。
正直、俺の韓国映画に対する評価は「パワーはあるが、芝居が大根」というものだった。
今更、往時の「大映ドラマ」的な芝居されても、鼻につくだけで大げさすぎて笑ってしまうだけだ。
(だから「韓国ドラマ」は観ていると、段々イライラしてくるので最近すっかり観なくなった)
けれどもこの映画で、韓国映画の底力を見た思いがする。
「スタイリッシュ」などと言えば聞こえはいいが、内容的にどんどん薄っぺらくなり、ある種の「生々しさ」や「泥臭さ」にフタをしてしまっているような昨今の邦画や、コンサバティブ向けの「紋切り型」のストーリーしか描けなくなってしまい、「見世物」化するハリウッドには絶対にこんな映画は撮影できない。
この映画で先ず注目すべきところは、「重度障害者」を描く時によく用いられる「聖なる白痴」「無垢な存在としての障害者」という「逆差別」「逆偏見」的な手段を一切使っていないことだ。
日本ではまるで腫れ物に触るかのようにして扱われない「障害者のセックス」についても、しっかりと逃げることなく真正面から描いている。
そしてなによりも、その重度脳性麻痺の女性、コンジュを演じた主演女優ムン・ソリの演技力の凄まじさ。
「演技の神が宿ったかのような」壮絶な演技力で、脳性麻痺という生半可なことじゃ演じることのできない役を、見事に演じ切っている。
その演技力たるや、「レインマン」で自閉症を演じてオスカーを獲得したダスティン・ホフマンの演技など児戯に思えるほどのものだ。
そしてその「神がかった」演技によって支えられる、骨太で甘えの無い、そして巧みな構成で描かれる「生々しい」臭いのするファンタジーの素晴らしさ!
このような物語を、叙情に流されることなく、それでいて極上のファンタジーとして描きえるその力量は「凄い」の一言に尽きる。
映画で描かれるソウルの風景は、「臭い」がしてきそうなほど小汚く「生々しい」。
そして登場する人物達もまた、「体液と体臭」が感じられるように「生々しい」。
#実際、ソウルは本当に「小汚い」都市だ。
明け方の新宿歌舞伎町のゴミ溜めのような光景が、そこかしこに展開している。
侮蔑的に「キムチ臭い」などと言われるが、それは事実だったりする。
でも、だからこそ人間の根源的な、言うなれば「コテコテ」のエネルギーに満ち溢れた魅力的な都市なんだけどね。
前半に登場する、鏡の反射光が姿を変える幻想的なシーンの美しさ。
ボロアパートに半ば「臭いものにフタ」のように閉じ込められたコンジュを、ソル・ギョング(また彼の演技も実にイイのだ!)演じるジョンドゥが屋上に連れ出すシーンの、彼女の頭上にどこまでも広がる青空の涙が出るほどの清清しさ。
渋滞の高速道路の上で、カーラジオの「サティスファクション」に合わせ踊るシーン。
そして「魔法」が「現実」へと変わるラスト。
そのどれもこれもが、本当に涙が出そうになほどに儚く、美しい。
そして、こうした織り込まれた「ファンタジー」のシーンがあってこそ、あくまで「現実」の1シーンとして描かれるラストシーンの「美しさ」が際立つ。
映画開始当初、ムン・ソリの演じる脳性麻痺者の姿に、正直「落ち着かなさ」を感じた。
それは、実際に脳性麻痺の人を目のあたりにしたときに感じるあの感情だ。
そう「差別」や「偏見」を生み出す土壌であるあの感覚。
「自分とは異質なものへの抵抗感・嫌悪感」といったものだ。
その瞬間、嫌というほど自分の中にある「差別感情」「偏見」といったものを思い知らされる。
けれども、映画が終わる頃になると、その感覚は完全にどこかに消えてしまっていた。
「障害者」という要素は、映画が終わる頃には特別なシチュエーションでもなんでもなく「で、それが一体どうしたの?」という、ごく当たり前で当然な、なんでもないものになってしまっていた。
そして、最初に感じた落ち着かなさが、なんでもないものへと変わってしまう「ターニングポイント」がどこであったのか、振り返ってみても、俺はどうしても思い出すことができない。
そのことこそ、この映画の「構成」の巧みさの証拠だと思う。
本当に骨太で見応えのある、そして普遍的で切なくも美しい恋愛映画。
普段韓国映画なんか観ない人も。
韓国映画だとか、ハリウッドだとか、なんだとか、そーいう小ざかしいジャンル分けなんか全く意味ないです。
この「映画」には。
文句なしの傑作。
のむさんが見たソウル、韓国ってのはかなりババッちくてアジア丸出しな場所が多いような気もしますね。そしてもう一つ言える事は、そういった場所をその状態で見ておけて良かったかも。ソウルも釜山もちょっとずつ変わってきています。
そういえば、ソウル行ってからもう5年経過してるんですよね。あれだけダイナミズムに溢れた街だから、さぞかし様変わりしてるんでしょうね。丁度IMFショックから立ち直りかけた直後、その後のIT大景気の前夜、ぐらいの時期だったし。今年、休暇とって、ぶらっと行ってこようかなあ?>ソウル。
行くべし、そして心ゆくまでダイブするべしアジア丸出し電脳都市ソウル!変わっていく様子を見るに連れ日本人の小ささを感じるものです。のむさんなら普通の人の数倍は楽しめるはずです。