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2004年12月13日 03:52 : 雲のむこう、約束の場所

「ほしのこえ」の新海誠の長編映画 「雲のむこう、約束の場所」を観に行った。

「ほしのこえ」で「インディーズフルデジタルアニメ」で、個人制作で商業的に成立するクオリティの作品を作り上げた新海誠だが、その「1人でこんなクオリティのアニメ作ったこと」よりも(もちろん、それは凄いんし。実際、映像的にも美麗なんだけど)むしろ俺は「光速度で引き裂かれる二人」というSF的アイディアを、詩的に、狂おしいほどの切なさで描いてみせたその「詩的/私的な映像世界」の方を高く評価していた。

そういうわけで、昨年公開されたパイロット版で、すでに「これは面白い映画になるぞ」という期待に胸をドキドキさせていたわけだ。

雲のむこう、約束の場所

おすすめ平均 
星5つ
買って損なし
映画を観て
2度も劇場で観ました。
映画館で観て、涙流しながら帰りました。

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んが。

結果からいうと「雲のむこう、約束の場所」は、そのせっかくの持ち味が、巧く活かされきっていないと感じた。

たしかに映像表現は、前作「ほしのこえ」から格段に向上しているし、新海誠の映像の肝である「透明な光」の演出と、「丁寧に美しく切り取られたありふれた日常の情景」の描写はますます魅力を増している。

また、本作のある種の「象徴(イコン)」である、主人公2人が製作した飛行機「ヴェラシーラ」の離陸するシーンの高揚感たるや、「きた、きた、きたーーーーっ!!」と思わずスクリーンの前でこぶしを握りしめるほどだった。

「ほしのこえ」では、「声優吹き替え版」と、監督自身が声を努める「オリジナル版」の2つがあって。俺は断然、木訥とぼそぼそ喋る「オリジナル版」の方が好きなのだけども。
(正直「声優版」は、あまりに「アニメ声」すぎて、せっかくのプライヴェートフィルム的な肌触りを殺してしまっていたと思う)
今回の主人公、ヒロキの声を努めるアニメ初挑戦の吉岡秀隆の声はいい味だしてるし。ヒロキの親友タクヤの声は、あの冬ソナでヨン様の声を努めた萩原聖人だし。ヒロイン、サユリの声も昨今の「全く聞き分けができないブリブリ萌え萌えなクサレ声優」とは一線を画していて、違和感が無い。

そして「切なさ」。
劇中で描かれる「眠り姫」の物語や、主人公3人が過ごした穏やかな「いつまでもこんな日が続くような気がしていた」日常の描写と、それから3年後、様々な痛みを抱えながら「現実」と対峙しようとする、その一歩手前の「現在」の姿の対比。
そこで繰り広げられるほのかな恋と、海の向こう、ユニオン占領下の北海道にそびえ立つ巨大な「塔」への憧れ。
そういった中に織り込まれた「切なさ」は確かにある。

だけども、最大の問題はそれが「水増しされている」感がどうしてもしてしまうのだ。
つまり、なんというか、個々のモティーフも、テーマも、映像も、全く申し分無いにもかかわらず。
全体を通してみると、どうにもそれらが「未消化」である感が否めない。

例えていうなら、短編、あるいは中編小説を、がんばって長編小説のサイズに書き直したような、そんな印象なのだ。

だから物語の中にちりばめられた様々な伏線や、設定も、結局は未消化のまま、そして「え?これで終わりなの?」と、言ってしまえば唐突に映画は終わってしまう。
まだ未見の人のためにネタバレは書かないが、「え、じゃああの冒頭のシーンは一体なんだったの?」と、思わせぶりなモノローグも含め、冒頭の描写(物語は主人公の「回想」としてはじまる)とラストが1つの「円環」としてつながらない。

中短編を長編に書き直す過程で付け加えられた「水増し部分」が邪魔をして、そのせいで結局「この映画で、一番描きたかったのは何なのか?」という、最も肝心な部分さえもが曖昧模糊としてしまっている。

物語が転がりはじめるまでの60分と、クライマックスに向けての30分とがどうにもアンバランスなのだ。
せめてあと30分、いや10分でいい。
物語の起承転結となる「転」?「結」の部分をもう少し、より深く描いてほしかった。
あるいはいっそ、もっと短い尺に圧縮してしまったほうが良かったような気がしてならない。
「尺を決められてその枠にあわせて作った」のか、「作った結果がこの尺」なのかがわからないのだけども。なんか「前者」、のような気がする。映画を観た印象では。
だからどうも「最後に息切れした」感がして仕方がない。

ここまで苦言を呈してきたけど、まぁ・・・多分、DVDになったら買うと思うよ。
今回は1人ではなく、それなりにスタッフも揃ったけれども、それでもやはり「映画製作システム」という、通常の劇映画から比べれば、驚くほどの小規模でこれだけの映像が製作できたのだから。
その点は素直に評価したい。

だけど、もう「プロの映像作家」としてやっていっているし、その部分で期待されている以上「この人数でよくやった」というのは、次回からはまったく「言い訳」にならないと思う。

なんていうか「あなたの描く映像が大好きです」よ。
だからこその苦言だし、次回作はもっと期待したいと思う。
もう「個人(小規模)でここまでのことができるんだ!」的な部分から脱却して、俺としては「映画システム」にのっかってもいいし、短くてもいいから「新海誠の魅力」が最大限に発揮された映像作品を、是非是非また観てみたいと、本気でそう思いました。

投稿者 : のむけん | カテゴリ : 映画・ビデオ・TV | Updated at : 2008.3.26 14:32
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